頭の中の音楽がコンクリートジャングル

好きな音楽やバンドを聞かれると1分で端的に語ることができないことに気付いたので、頭の中の音楽情報を片付けたりするブログです。

Pack の セルフタイトルアルバム

どうも、サイダーです。今回はドイツの爆裂パンクバンドです。

 

バンド名は Pack。その筋の方にはパンクという括りで通っており、やはり紛れもなくドイツ界の初期パンクバンドでありますが、どうやらガレージ文脈でも語られているようでして。僕の耳にもクリティカルなのです。

 

まずはジャケットにもなっているメンバー写真から確認です。

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さて、バンドというものが一発ドカンと当て、酒池肉林のアヘアヘドリームとまではいかずとも、一般大衆に浸透するレベルの人気を獲得するには?そう、ビジュアル面に目を引くものがなければなりません。分かりやすいところではイケメン、あるいはイケジョの存在です。

 

例え一般ピーポーの目からはキモイ、キチガイ染みている、変態、と言われるような見た目であれ、逆に一目みたら忘れられないアクの強ささえあれば、ある一定の人気を集めた時点でロックンロール浮動層も「それも味」「むしろそれがいい」と好意的にとらえざるを得なくなります。例えば、ゆらゆら帝国のように。

 

バンドにおけるビジュアル面と認知度に相関性があるということは以上により明白です。少なくともここ 日いづる国ジャパンで顕著な現象です。

 

カッコいいバンドの例。”カッコいいバンド”でGoogle画像検索して一番最初に出てきた画像なので間違いありません。

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で、Pack ですが。彼らの写真をご覧下さい。まるでバンドでサクセスするまで地元に帰れないという呪いにかけられた人間のようです。お兄さんとおっさんの狭間を行く世代であり、死相が放たれているのを感じます。それも無理はありません。何故なら、彼らはアルバムを発売した1978年時点でゆうに齢は30を超えており、概してバンドと言うものは若者中心の文化ですが、ユースと言うには色々と無理がある状態に達していたのです。

 

大体何なんだこいつらの背後に見えているもんは、自販機だかなんだか分からんがもうちょっと恰好がつく場所は無かったのか、という類の問いかけは愚問です。この場所こそが、彼らにとっての最適解であったのでしょう。そうでなくとも、経済的な事情ゆえにここを選ばざるを得なかった可能性は否定できず、だとしたらそれは致し方ないと言う他ありません。

 

では、音源はどうでしょう。ジャケットから放たれる胡散臭さとは打って変わり、1曲目のイントロからザラザラとしたギターの音が鳴ることで、期待のボルテージは一気に上昇します。さらに間髪入れることなく「ういぃぃ、べたぁぁぁ げぇっと れでぃぃぃぃ 」というやけっぱちで投げやりなしゃがれボーカルによって気分がアッパーな方向へ強制シフトされ、僕の心は一発で昇天したのでした。

 

Pack の We Better Get Ready。聴け、アラサーの雄叫びを。

 

 そして3曲目には唐突に聞いたことのあるイントロが。まさか 包帯ぐるぐるゴミクズガレージバンドの元ネタが Pack だったなんて!これには大量失禁とまではいきませんが数mlの尿漏れをしかねない状態、所謂しょんべんちびりそうという感覚を覚えたことは確かです。

 

ある程度ガレージパンクに明るい殿方・姫君の皆様におかれましては、包帯まきまきゴミクソガレージバンド というのが The Mummies である事は一目瞭然ですね。少しだけ The Mummies を解説すると、90年代アメリカから彗星のごとく出現したトラッシュガレージ集団です。僕は見た目だけの色物バンドかと思って最初は手を出していませんでしたが、聴いてみたら失禁物でした。

 

The Mummies の Dangerman。上記の通り Pack のカバー。

 

今回紹介しているアルバムは彼らの唯一作ですが、石炭倉庫で録音されました。なぜそのようなことを唐突に書いたかと言いますと、情報が少なすぎるんだよタワケ。日本語版はともかく英語版の Wiki ぐらいあるだろうとタカを括っていたら、全くなし。

 

諦めきれずネットの海をしばしウロウロした所、ドイツ語版にありました。そんなもん読めるわけねーっつの。しかし、パンクやガレージに興味があってドイツ語が読めるというニッチな需要を満たすべく、参考までにドイツ語版 Wiki のリンクを貼っておきます。ドイツ語が読めるみんなは是非読んでくれよな。

 

The Pack (Punkband) – Wikipedia

 

1977年 当時、ドイツではRAFという左翼団体が銀行強盗やハイジャックなどの各種テロを扇動したという”ドイツの秋”と呼ばれる動きがあったそうです。その時代のピリッとした空気に呼応するがごとく1978年に登場したアラサー集団 Pack。バンド解散後、ギタリストがこう言ったそうです。

 

「セックスピストルズのレコードは綺麗すぎる。彼らはパンクかもしれないが、サウンドはパンクじゃない。」

 

うわー言っちゃったー。例え 頭で思っても言いたいこと全部言わないのが大人だと思いますが、逝っちゃってますね。この発言にはさすがにユースなエナジーが感じとれます。しかし、その言葉に偽り無し。

 

Pack の Nobody Can Tell Us と、Come On。この風貌だからこそ、「やりたいことやりゃええんや」と歌うことに意味があります。